'70 メルセデス・ベンツ C111/II
70年代のメルセデス・ベンツ走行実験車両が
C111シリーズで、エンジンとプラットホーム
ボディと空力のテストに供されました。
中でも初期型のC111とC111/IIは
細部が微妙に違う13台が制作されて、
自社製ロータリーエンジンが搭載されています。
メルセデス・ベンツ C111/II 1/43 ミニチャンプス製
1960年代から1970年初頭にかけては
各社で次世代エンジンの可能性の一つとして、
ロータリーエンジンが研究されていました。
特に熱心な研究を行っていたのが
ロータリーの本家本元のNSU、
続いて市販車を矢継ぎ早に投入したマツダ、
変態的技術に定評のあるシトロエン、
アメリカのビッグスリーの一つGM、
そして今回紹介のメルセデス・ベンツです。
まず、1969年にC111が発表されます。
ミドシップレイアウトに
300SLからの伝統のガルウイングドアと
600cc×3ローターのロータリーエンジンを搭載し
280psを発揮したコンセプトカーでした。
そして、翌年の1970年3月に発展型のC111/IIが
ジュネーブモータショーで御披露目。
空力的にさらに洗練されたデザインに、
搭載されるエンジンはなんと
600cc×4ローターのロータリーエンジン。
マツダにも研究レベルでは
R16Aという4ローターを搭載した
実験車両が存在していたといいますが、
C111/IIは350psを発揮して最高速度は300km。
ロータリーエンジンの速度記録を更新しました。
しかし、1973年のオイルショックを機に
メルセデス・ベンツの
ロータリーエンジンの研究開発は終了します。
C111の限定販売も一時期検討されたようですが
自ずとキャンセルになりました。
1976年にはエンジンをディーゼルエンジンに
換装したC111/IIDの発表にも分かるように、
その後、C111シリーズは70年代を通して、
ディーゼルとターボ、空力研究を続けます。
その先は少し横道ではありますが、
1978年にC111派生のCW311が発表されます。
メルセデス・ベンツ本体ではCW311の
生産には至りませんでしたが、ライセンスを
ドイツのコーチビルダーイズデラに譲渡して、
1984年からイズデラ・インペレーター108i
というスーパーカーとして発売に至っています。
車名には名乗っていませんが
しっかりとスリーポインテッド・スターが
フロントには付いていまして、
メルセデス・ベンツであることを誇示しています。
たしか、こちらは最近スパークから
ミニカーとして発売されていました。
(守備範囲外なので私は買っていません)
デザインは後にW124 初代Eクラスなど
多数のメルセデス・ベンツの市販車を手掛ける
ブルーノ・サッコによるのもので、
スーパーカー的な楔形のフォルムながら
どこか落ち着きさえある塊感のあるデザインは
ドイツ車であることを強く意識させます。
このミニカーのリアハッチは可動式で
そこには珠玉の4ローターロータリーエンジンが
収まっています。
ミドシップロータリーのスーパーカー的な扱いを
受ける実験車両として、
C111/IIとマツダ RX-500は
比較されることの多いクルマだと思いますが、
並べてみるとその印象は随分と違います。
C111/IIの方が一回り大きく
グランドツーリング的なゆとりすら感じる一方で、
RX-500は低く小さく
あくまでスポーツカーを意識させます。
両者の会社規模と顧客層、
開発思想の差が出ていて好対照ですね。
そんな両社のミドシップカーの末裔ですが、
技術的に明確な繋がりはないものの
21年後に直接対決を演じます。
1991年ル・マン24時間レース。
ロータリーを捨てた
メルセデス・ベンツ擁するC11に挑戦するのは
ロータリーの誇りを背負ったマツダ 787B。
その結果は皆様の知っての通り。
メルセデス・ベンツ C111とC11という名前に
奇妙な因縁を感じてみるのも
こじつけですが面白いかも知れません。