RE Model car Museum

1/43RE車ミニカーBLOG

'64 NSU ヴァンケルスパイダー

世界初のロータリーエンジン登載車は何か。
コスモスポーツ

いいえ、世界初はNSUヴァンケルスパイダー
(単にNSUスパイダーとも言う)です。


でも、量産車でロータリーを初めて載せたのは
コスモスポーツなんでしょう?

いいえ、コスモスポーツの生産台数は1,176台、
対してヴァンケルスパイダーは2,375台と
生産台数はコスモスポーツの2倍。

ヴァンケルスパイダーを量産車でないとすると
コスモスポーツも純然たる量産車とは言えません。

 

いずれの括りでも世界初の栄誉は
ロータリーエンジンのライセンサーNSUの
ヴァンケルスパイダーにあるのです。

そう言わないとたぶんドイツ人は怒ります。

……冗談はともかくロータリーの歴史は
たしかにこのクルマから始まったのです。

NSU スパイダー 1/43 ミニチャンプス製

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今更ながらロータリーエンジンの説明をしますと、
レシプロエンジンのように
往復運動を回転動力に変換するのではなく、
回転運動をそのまま回転動力に出力するのが
自然ではないか
という考えに基づいて生まれたエンジンです。

詳しいことをもっと知りたい理系な方は
ロータリーエンジン - Wikipedia
を読んで頂けるとよく分かるかと思います。


時は1957年。西ドイツNSUの
フェリクス・ヴァンケル博士によって
DKM型ロータリーエンジンが完成しました。

これは純粋な回転運動機関で
研究者には理想的なエンジンのように思えます。
コペルニクス的な円運動の美しさを追及した
いわばロマン、芸術ですよね。


しかし、NSUは構造が複雑で量産化が難しい
DKM型の開発を進めず、KKM型の開発に切り替え
1958年にそれを完成させます。

KKM型は純粋な回転運動機関ではなく、
繭型のハウジング内を
ローターが偏心しながら回転するもので
その後のロータリーエンジンの祖になりました。


純粋回転から偏心回転への切り替えは
ヴァンケル博士にとっては不満だったようです。
当初の科学的にピュアな研究動機を
捻じ曲げてしまうからでしょうか。

もちろん、そんなセンチメンタルな話だけではなく
偏心回転にすることで生まれる障害も
ヴァンケル博士は懸念してのことでした。

というのも、一番の問題はローターの頂点にある
アペックスシールに加わる負荷が偏心回転によって
変化するようになってしまうからです。

 

事実これによって、ローターハウジング内は
チャターマーク(波状摩耗)が発生し、
耐久性に大きな問題を抱えることになりました。

他にもシーリング不良によるオイル消費が甚大で
2stエンジンのように白煙を噴きながら走ること、
ペリ吸気ペリ排気のシングルローターゆえの
低回転域で振動が発生し安定しないことなど、
問題は山積みでした。


しかしNSUは1964年、
世界初のロータリーエンジン搭載の量産車
ヴァンケルスパイダーの発売を決行します。
もちろん、もろもろの問題点は未解決のまま。

 

そんなこともあって最初に戻りますが、
実用エンジンとしては信頼性に疑問符がついて
世界初の量産ロータリー車となるかは
意見が分かれているだと思います。

欠陥車であるというのは確かなんですが、
欠陥を抱えた量産品は
思い付くだけでもいくらでもありますし、
欠陥の有無が量産品か否かの判別基準にはならない
と私は思っています。


覚悟はしていましたが前振りが長くなりました。
そんなヴァンケルスパイダー。 

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1959年に発売の同社シュポルトプリンツ
2座オープン化したもので、
ベース車のデザインは
イタリアの名門カロッツェリア
ベルトーネ在籍時代のスカリオーネ

2座オープン化に伴うデザイン変更には、
後に同社のRo80を手掛ける
クラウス・ルーテがあたっています。

 

駆動方式はRRでシングルローター500ccの
KKM502型ロータリーエンジンから
50psを絞り出しました。
1960年代当時の感覚ではリッター100馬力は
相当にハイパワーだったかと思います。

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重量バランス改善の為、
フロントにラジエターがあることから
RR車ながらフロントグリルがつきます。
ダミーではありません。

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リアのオーバーハングを見ると
RRであることが良く分かります。
控えめなテールフィンが可愛らしくもクラシック。

外観からはロータリーエンジン
先進的なイメージは皆無です。

 

実は一度だけ、この実車を見たことがあります。
7年程前の苫小牧発大洗行のフェリー乗り場
だったかと思います。

まさに動いているロータリー車の始祖。
恐らく日本に何台も残っていないでしょう。
その時はオーナー様に声をかけるのも恐れ多く、
見送るだけになってしまったのが
今思えば悔やまれます。

 

そんなクルマにもう一度会いたくて
買ってしまったこのミニチャンプスのミニカー。

メタリックブルーのボディカラーと
赤いシートのコントラストが鮮やかで
お気に入りの1台です。


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